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08:放課後
「あー終わった終わった」
ふんぞり返ってだるそうにあくびをするプロイセンは、細めた目でスペインを見やった。
スペインは微妙な表情で視線を逸らし、顔の前で手を合わせる。
「今日は無理やわ、バイトせな」
「お前最近バイトばっかだよなー。おいフランス」
「あー俺も今日はパス、なぜなら「デートとかいいやがったらぶっとばす」…せ、生徒会だよ」
たまには仕事しなきゃ会長にどやされんの。どこか遠い目をしたフランスに鼻を鳴らし、プロイセンは視線を隣の席へと向けた。プロイセンが何も言わないうちに、空気が読める方であるその少女は答えた。
「生徒会」
「だよなー」
「ごめん」
ほんの少しの期待と多大なる諦めを含んだ視線を向けられたは苦笑して、スペインと同じようにぱちんと両手を合わせた。別にいいけどよ、拗ねるように唇を尖らせたプロイセンに、三者三様の「また今度」のフォロー。これが建前ではないことはなんだかんだで4人の共有した思考であるので、プロイセンはまだちょっとひねくれつつも、急ぎ足のスペインと下駄箱への道を歩いていくのだった。
「真面目だよなあ、」
「お仕事はしっかりやらなきゃでしょ。」
「なんていってぇ、愛のチカラは偉大だね!」
「うっさいヒゲぇ!」
「うひょお!」
指でフランスの脇腹を突くと、フランスは大げさにくねりと身を捩った。ちょっとキモい。
「ったくあの会長のなにがいいんだか。」
「ん?…語るよ?」
「遠慮しとく。まあかわいいっちゃかわいいけどさあ」
「…しっ!もう会室!今日もまじめに仕事しないと…」
「いやっわかってるってっ!だからそんな怖い目しないの!」
がちゃり
フランスがドアを開ければひろがる、高級ホテルのスイートルームのような空間。そしてそれを占有するのが、そこにおわしますアーサー・カークランド会長である。
「、早かったな。エロ髭ぇてめえは遅刻だ」
私が一歩早く会室の絨毯を踏みしめると、イギリスはにやりと笑ってそう言った。
「えぇ!?まさにタッチの差ぁ!?」
「来ただけマシか。いつもすまないな」
「いえ、とんでもないです」
「せめて無視は止めよう!?おにいさん泣いちゃうんだからっ」
めそめそとハンカチを噛みしめるフランスをおざなりに慰めて、は自分の席に着いた。雑用にも似たの仕事はほぼ簡単なものだが量は多い。髪とともに心もきゅっと絞めて、は一番上の紙をひらりと持ち上げた。
集中モードに入ったは着々と仕事を片付ける。さぼり癖のあるフランスを毎回連行してきている甲斐もあり、溜まっていた書類は確実にその量を減らしていた。きっちりとファイルに分別されタグが付けられた書類棚も美しい。これもの功績である。
書類仕事が終わり、次の指示を仰ごうと会長の方を見ると、会長の後ろ、大きな窓から夕焼けが差し込んできていた。「会長、」呼びかければ彼は机から顔を上げ、少し気難しげな顔をした。
「…あー、もういい。帰っていいぞ」
いつも遅くまで仕事させちまって悪いから、たまには早く帰っても構わないからな、
その気持ちは言外に含ませて、俺は彼女から視線を逸らした。
はい、という静かな声。鞄と靴の音。
「失礼、しました」
廊下から慌ただしい靴音が遠ざかっていく。…なんだ、用があるなら言ってくれれば、俺だって、「イギリス。」
「んだよ。」
睨みつけるようにフランスに視線をやると、フランスは珍しく真面目な顔をして、眉根を寄せていた。
「なんであんな良い子泣かせんのか、お兄さんわかんない。」
フランスは自分の鞄を掴んで、足早に部屋を出て行った。
…は?俺は呆然と立ち尽くす。
泣かせる?誰を、誰が。
…タイミング的には、一人しかありえなかった。
「…ー。」
気遣わしげにかけられた声、は小さく笑って、自分で目尻に溜まった雫を掬い取った。
強気な彼女のその姿を見るに、言葉ってものは本当に扱いが難しいんだと思う。
言葉の扱いには自信があっても、決してそれで慢心するべきではない、と。
今の俺の役目は、彼女の頬にキスを落として、涙を吸い取ることじゃあない。
「大丈夫」とつぶやく彼女の言葉を鵜呑みにするのが、彼女のためにできる最良のことだ。
さっきの言葉を訂正するのは、俺がすることじゃない。
任せる相手があいつだってのが…ちょっと、癪だけどね。
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