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12:売店
昼休みが始まるやいなや、脇目も振らず教室を飛び出す生徒。
廊下を走るのを教師に見とがめられ、脱落する数人を横目にひた走る生還者。
そうして必死に走っても、教室の立地のいいものと授業をサボったものに奪われる順番…!!
個数限定の人気のパンは売り切れ、残るは日持ちのいい無難なパンのみ…
「学校の売店とはそう、かくあるべきなのです!」
「そんなんずっとできるかよ。勉強に支障が出るだろ」
日本とイギリスの見守る先には、日本が語るのとは正反対のなんとも穏やかな売店の姿があった。
「在庫はしっかり用意させてるし、売り切れなんて滅多にない。注文だってできる。」
「…ですよね。実際そんな売店不便ですから、なんらかの形で改善策がとられますし…」
「不便な店はこの学園にはいらねぇしな。」
そんな売店の様子を査察するような眼で見つめるのは、生徒会長イギリスと、最近その友達になった日本である。
その視線の先には、それでも混雑はしている売店前の行列に交じる一人の少女がいた。
「俺に言えば、並ばなくても買えるようにしてやるのに…」
「それは…職権濫用です、イギリスさん。」
「今さらだろ」
人波にふとすれば飲まれる彼女を、ふたりはそれでもしっかり目で追う。
ちなみに売店周辺は購買者であふれているため、彼らは売店のある階より一つ上の、さらに違う校舎から彼女を観察していた。
角度的にちょうど売店が見えることがいつもは煩雑なだけなのだが、中に彼女が交じっているとなれば話は違うわけで。
マーマイトを塗りたくったパンを口に運ぶのも時に忘れつつ、イギリスは落ち着かない様子でじっと階下を見つめている。
今日もしっかり早起きして作ってきた弁当をぱくつきながら、日本はじっとその様子を観察していた。
最近仲良くなったイギリス、ことアーサー・カークランドは、たまにその風評通りの極悪な性格を覗かせることもあったが、
一度彼が懐に入れた者ならとことん可愛がり慈しむ人物でもあった。
そしてそのお眼鏡にかなった自分は、彼の友人としてこうして昼食をともにしているわけだが。
(いい人なんですけどねぇ)
愛情表現がどこか斜め上で、わかりにくくて、少し付き合った程度では皮肉に覆われて見えなくなってしまう。
部下に慕われるタイプではない彼を、なんとか補佐しているのが彼女、・である。
人を率いるカリスマ性というか、魅力というか。ともすればさぼりがちな数人も、彼女が声をかければしっかりと仕事を始める。
彼女自身も多少めんどくさがりではあるが根は真面目だし、彼とは相性がいいはずなのだ。
けれどまだ、どう接していいのかお互いにわかっていない節がある。
それはお互いのおたがいに対する想いのせいであり、二人の間に確実に存在する信頼感のせいでもあった。
しかし、案ずることはない。
基本的にこの学園生活に終わりはない。時間はまだたっぷりあるのだから。
「昼休みが終わってしまいますよ、イギリスさん」
少女が袋を二つ三つ抱えて駆け出していく姿が見えなくなったのを見計らって、日本はにこり、と微笑んだ。
ああ、と彼は興味の失せた視線を返し、ランチボックスにまるごとひとつ入っているリンゴを果物ナイフで切り取り、齧った。
最初こそ日本もその昼食のメニューに戸惑いはしたが、今では慣れたものである。
「ただいまーっ」ガラガラと扉を開け、が教室に入ってきた。
教室の後ろのほうでぐだぐだとどうでもいい会話を重ねていた三人組が話をやめ、口々に彼女を迎え入れる。
「おーおかえり」
「ちゃんと買えたか?」
「すんごい列だった。もう絶対お弁当忘れない!と誓ったね」
椅子を引いて座り込み、紅一点を加えた四人組はそれでもやはりくだらない話題で盛り上がる。
聞いているのは楽しいが、意見を求められても確実に加われないであろう会話の内容をこっそり盗み聞きしているのは、おそらく目の前の友人も同様であろう。
まったく興味のないようにふるまってはいるが、気もそぞろで生徒会がらみの話も一向に進まない。
たまには、と今日は日本がイギリスの教室に来てみたものの、やはりこれは明日からいつもどおりに戻しておくべきだ、と日本は思ったのだった。
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