●嫌い


山賊のねぐらは、すでに陸遜率いる隊によって取り囲まれていました。
ひっそりと、機を待ちます。確実な時を待たねば、大事な大事なお姫様に傷が付いてしまうかもしれません。
(もう、遅いのかもしれませんが…)

ギリ、と噛み締めた歯は欠けてもおかしくないほど。
彼女が拐かされたとの報を聞いた時から、
いやもっと早く、彼女が姿を見せなくなってから、
軍師の彼女への想いは募るばかりでした。

(これだけ時間を貰えれば嫌でも気づきますよ。私は…)
「陸将軍」

偵察に行かせた兵が、山賊の酒宴を告げます。
お姫様は山賊の頭と思われる男に別室で侍らされている、ということも。

「…好機、ですね。」

燃え上がる怒りの炎は既に青く、軍師は驚くほど冷静にそう言いました。

「私は姫を助けに。他は山賊を捕縛してください。」

少数精鋭の隊が、ゆらりと揺らめきます。
ああそれから。軍師は底冷えのする瞳で、付け加えました。

「逆賊の生死は問いません。」

いち早く草影を飛び出す軍師に続き、複数の影が音もなく、駆けて行きました。








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