『preusenさんはじめまして、と申します。ブログ拝見させていただきました。
小鳥さんすごくかわいいですね!パンダのぬいぐるみもかわいいです!
あれはいくらぐらいだったんでしょうか?私も欲しいのでぜひ教えて下さい。』


「…っと、これで、いいのかな…?」
かたかたり、メーラーに打ち込む。打ち込んでは消して、考えて、消して。
暇つぶしにブログを巡っていて、一目惚れしたパンダのぬいぐるみ。
その持ち主であるブログの中の人に、私は思い切ってメールをすることにしました。
コメント欄はついています。
ですが、いくつかついているコメントはなんだかみんな身内というか知り合いの方のようで、
ブログ上でしか彼を見たことがない私が気軽にコメントできる雰囲気ではありません。。
(日本人だからそういうの気になります。…仕方ありませんが)

だから、メールすることにしました。
 ブログのプロフィール写真が彼自身ならば、
彼は彼自身がいうように(まあそこが少し気になるのですが…)…イケメンってやつでして、
パンダの価格を知りたいだけの内容でその意図しかないにしろ、なんだか小恥ずかしいです。

送信ボタンの上でもやっぱりしばらくカーソルをさまよわせて、
嫌な汗が垂れるくらいの時間が、経ちました。 送っちゃう?伝えちゃう?私の存在を、ブログの中の人ってだけの、preusenさんに?
ご迷惑じゃないかな、ググレカスって言われないかな?でもAmaz○nで検索しても全然出てこなかっ「、交代の時間ですよ?」

「ひぎゃぁ!?」
カチッ 突然後ろから声がして、でもほんとは全然突然じゃなくて、
だって九時は兄上様と共有のパソコンを交代する時間なんです!
…とにかく、時間なので兄上様がいらっしゃったみたいです。
そんなに長くパソコンをしていたつもりではなかったんですが…
じゃなくて! 問題はこの画面の表示です。


『送信されました』

…嘘でしょう!?驚いた拍子に押してしまった…そういう、ことですか。

「…アニメ声を出せとはいいませんから、もうすこし萌えるかんじでお願いしますよ。
それはそれで萌えますが」
「ええと、善処します…」

踏ん切りがついてすっきりしたような、意図しない結果が複雑なような、
微妙な気分で、とりあえず私は兄上様にお礼を言いました。

「あと…ありがとうございます、兄上様。」
「どういたしまして。さ、早くログオフしてくれませんか?」

新しいエロゲを片手に、兄上様は興奮さめやらぬ様子で私を急かしました。
ああ、兄上様の次の嫁はツンデレなんですね、そのツインテと釣り目で分かります。
私的には以前お家にいらっしゃったイギリス様のツンデレ具合をもっと細部まで具体的によく知りたいのですが。
完璧な正統派ツンデレと兄上様に言わせしめるほどのツンデレ…妄想するだにわくわくします!

あ、えっと何の話でしたっけ?
…あ、パンダのぬいぐるみの話でしたね!
なんだかやっちゃったらやっちゃったで仕方ない気がしてきました。
なせばなりますよね!ケセラセラってやつですよあははっ!ヤケクソとか言わないで下さい必死なんです

とにかく兄上様がパソコンの前に座ったら、しかもエロゲの発売日なんかもう徹夜と相場が決まっていますから、
私はこれから渋いお茶と軽食を用意して差し上げます。徹夜ってお腹が減るんですよね。
兄上様の前に羊羹の乗ったお皿と濃いめの緑茶の入った湯のみを置いたら良い子な私は寝る時間です。
兄上様のスーパー深夜タイムですので。
大和撫子はゴミ箱の中の丸まったティッシュの中身と増減など気にする必要はないのです、ええ、断じて!!



私はいそいそと自室に戻り、携帯を取り出してPCサイトビューアで本日最後のメールチェックを行います。
密林からの商品案内が届いていますね…またのちほど考えます。
新着メールの中に、見知らぬアドレ…いや、これはまさか。


From:oresamahiyoko-westkawaiize@hetariamail.com
件名:メールありがとうな!
本文:っていうのか、俺様かっこいいだろ!
もっと俺様を誉めて良いんだぜ!あのパンダは確か…
忘れちまった。悪いな!優しい俺様が一体分けてやっ
てもいいぜ!


…私の出したメールから三十分と経っていないのに、「preusen」さんから返信が来ていました。
マナーサイトやらから見れば非難の的にされそうな文面ですが、私は気にしません。
画像ともブログの雰囲気とも合致していて、なんだか笑えるくらいです。
けど、最後の一文はなんなんでしょうか。分けてやってもいい?preusenさん自身のぬいぐるみを?

「…そんなわけないですよね」

返信ありがとうございます、だとかおいくらで譲って頂けますかとか、
そういう趣旨のことを八つ橋に包んでさらに前後を付け加えたものを書いて送ると、
今度は五 分足らずで返信が来た。

『俺様はすこぶる気分がいいからただでいい。そのかわり感想もっとくれ』

『恐れ入ります。感想でしたら喜んで。』

…向こうは私の住所どころか顔も知らないのに、どうやってくれるというんだろうか?


…こんなメールが、私たちのごくごく初期のメールでした。



それから私は時折感想を送って、他愛のない会話ともつかない言葉のやりとりをしばらく楽しんで。
ブログにない画像も彼は添付してきてくれて。イケメンです。三次元のイケメン画像が私のデータフォルダにどんどん増えていきます。
たまに送られてくる他の画像から伺える弟のヴェストさんも、
彼のブログにコメントしているらしい方々もみな、顔立ちの整った美男美女さんたちばかりです。
私もお返しに身近なものやお花を撮って送ったりして、そのやりとりはとても楽しいものでした。…ですから、


『なんでお前コメントしないんだ?』


そうメールがきたとき、何ていったらいいかわかりませんでした。
内輪コメは外部のものにとって入りにくいんです、が。


『メールはお嫌ですか?』
『嫌じゃねえけどよぉ』


…どう返したらいいかわからなくて、その日はそれ以上返信ができませんでした。




次の日。半ば習慣と化していたブックマークのブログめぐりは、彼のブログでストップしました。
落ち込んでいるようでした。慰めてくれと書いてありました。
「イタリア」さんが、「ドイツ」さんが、「スペイン」さんが励まします。
よかったと思いました、けれどそれらのコメントへの返信も、翌日の画像も記事も、
彼の調子が戻ったようには到底思えないような内容でした。

『大丈夫ですか?/

メールでなく、コメント欄に。それだけを書き込みました。

それだけなのに、翌日の彼のブログはいつも通りのテンションで綴られていました。
原因も結果もわかりやすくてかわいすぎます。それからまた、私たちのメール交換も再開しました。






「よおイギリス!みてみろよー!」

自慢げに突き出されたプロイセンの携帯。
俺はホントにツンデレとかじゃなく普通に興味がなかったのでスルーすると、今度はひきつった笑いと涙目で迫ってきた。
まったく世話の焼ける奴だ。
「俺様のメル友で、ブログよんでて、俺様に興味持ちまくりの女だぜー!」

奴の携帯の待ち受け画面には、控えめに微笑む少女の姿。
やっと写メゲットしたんだよ!ガード固ぇよな!って、 「…こいつ、知ってるぞ」

ぴたり、面白いぐらい反応するプロイセン。
ただでさえ白ウサギみたいな目が血走ってやがる。「そういうことは早く言え」?…知るかよばか。




「日本ー、遊びにきたぞー」

玄関先で上がる声に、私は小走りで応対に向かいました。
声からしてイギリス様です。少し前に今から行くと連絡は入っているので、間違いありません。

ガラガラと引き戸を開けると、…イギリス様がいまし、た。
イギリス様はいたのです、…が、
「えと」
preusenさんも、いました。とりあえず、玄関を閉めました。

「お、おいっ!」
焦り気味のイギリス様の声が聞こえてきます。
ああ、イギリス様が遊びにいらっしゃったんでした。お迎えしなくては。

「イギリス様、ようこそいらっしゃいました」
「あ、ああ…いきなり閉めんなよな。危ねえし」
「申し訳ありません。さ、お上がり下さい。兄はもうすぐ帰って参りますので、お茶を」
「おい」

やっぱり、preusenさん。
不機嫌そうに目を細める姿は画像でみた記憶はなくて、本物の。

「いきなり三次元だなんて聞いてないよ…」

確かに顔が分かる写メは送りましたが、さすがにそれで即特定されるなんてまさかの展開です。
最早ちょっとだけ恋になってた、そんな相手が、いきなり突撃隣の晩御飯とか!
あらちょうどいいわイギリス様のためにご馳走を用意してあるんですよ!
よかったら食べてってくださいな!

、…だよな」
「ぁ、は…はい、…ブログの、…ですよね?」

どうしようどきどきする。思ってたより、画像より、ずっとかっこいい。
弟思いで、少し乱暴で、ちょっとSで、でもほんとはとても優しいひと。見た目は怖いくらいだけど、かわいいひと。

私を見てどう思いましたか?がっかり、されていないことを祈るばかりです。
写真はフォトショで加工したりしていません、詐欺じゃないんです!

ぼす、preusenさんの後ろ手に回された方の手が、大きな固まりと一緒に私に突き出されました。
…力、強いです。

「約束の、やつだ」
よくみると、それはブログのパンダのぬいぐるみでした。
社交辞令とかじゃなくて、本当に、

「…い、頂いて良いんですか?」
「今更いらなくなったとか言うなよ」
「いえ、…嬉しいです!ありがとうございます…!」

ぎゅうとぬいぐるみをだきしめると、なんだかすごくいいにおいがします。
ずっと嗅いでいたい…なんていうと変態みたいですけど…ほっとする香りです。
「えーと、だな。?」

イギリス様が困り顔で手持ち無沙汰にしています。
客間にお通しして、お茶とお菓子をお出しして、
…ああ、そのまえにぬいぐるみを部屋に置いてこなくっちゃ!






メル友募集終了だぜ!



(ぷ…ぷれうせんさんも上がって下さいな!)
(プロイセンって読むんだけどな!)




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