大雨の日に外で











途切れることなく続く滝のような音。







当然のことだが、止むまでは立ち往生だ。
そう急いている旅―つまり『任務』のこと―…でもなく、
ガルドに困っていないわけでもなかった一行は、
それぞれ思い思いにこの孤児院での自由な時間を楽しんでいる。

さっきまで、滅多にない大雨にはしゃいで子供たちと窓にべったりくっついていたカイルは
すでに興味の矛先を変え、けれど落ち着きもなくひっきりなしに何か騒いでいた。
今は義弟たちに、自分の小旅行のことを話してやっているところらしい。
ロニは疲れていたのか早々に二階に引っ込み、リアラはリアラでルーティさんに捕まって、なんだかんだで楽しそうにやっている。

二階からはどすんどすんという騒がしい音も聞こえ、けして静かな雰囲気ではないというのに、
雨音のせいで感じるわけのわからない疎外感。

誰もが口を開けて喋っているのに会話が掻き消されて聞こえないから。

不快ではなかった。虚ろ心地良かった。
雨自体は嫌いではなくむしろ好きだった。


外はざああああ、と途切れることなく大粒の雨が降り続けている。


立ち上がる私を気に留めたのは、微かに悲鳴をあげた椅子だけ。
ドアの方に歩いていく私を見、行き先を聞くように見上げる少女。
水溜りの上の傘立てからひとつ青い傘を取り、曖昧に微笑み返した。





ばちんばちんばちんと真っ青な布を叩きつける雨。
辺りは暗くて雨粒は見えにくかったが、町と孤児院を隔てる木々の上は微かに明るく、
大粒の霧を視覚的にも意識させた。
すぐドアを閉めて足を進めると、庭は沢のように流れていっていることに気付いた。
大した雨の量、さすがに川も増水気味だが、溢れかえるにはまだ、もっと
水の中級昌術並みに雨が降らないと難しいだろう。と
尤も、川が溢れかえったらどうすることもできないのだが。


どこもかしこも濁ったような雨水に浸かって、つっかけてきたサンダルごと踝まで流水に浸かる。
少し小さな青い傘は、横殴りの大雨に対しては何の役割も果たさなかった。
あっというまに濡れる服。しかも中途半端に。不快な程度に。

孤児院の窓のカーテンが全て閉まっているのを確認して、口角をあげた。






浸透していく雨。



静寂な喧騒のなか、だんだんじっとりと服が水を含んでいく。
すっかりTシャツが体に張り付いてもう不快さを通り越している。

自分はバカだと思った。閉じて先を地面に向けた傘を持つ腕を垂れていく幾本もの筋を感じて。
けれど雨のシャワーは、想像していたよりもずっと気持ちが良かった。
一度こうして全身を、雨に打たれてみたかった。

だんだん雨に濡れた、という感じも消えてゆく。
雨水で顔をコーティングされて、それを拭おうとする手の甲も濡れていて、
けれど何度も、意味のないそれを繰り返した。


『私』が流れてゆくような気さえして、それも良い、と思った。

ただ、不快なのは纏わりついてくる服とスカート。




「何をしている。」


後ろから、聞き慣れた胸の奥を突くような声。



なあんだ、貴方もびしょぬれじゃないか。

微笑んだら怒られて、不等間隔に真っ黒な水玉模様で彩られた漆黒のマントにくるまれて、連行。









皮肉も交えて怒られて、雨になるにはまだ早いな、と思った。













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こんな大雨の中に飛び出してみたいです。