使命とか宿命とか決められたものじゃなくって、これは。
「俺一人で十分だと思わないか。」
狼のような魔物を蹴り飛ばしながら、その男は言った。
その勢いのまま背後に迫ってきていた魔物も蹴散らし、
優美とも思えるほどの軌跡を描いて足を地面に降ろす。
言葉を放たれた女はそれに返事をすることもなく、ただ細身の剣を繰って
群れてくる魔物を片端から割いてゆく。
舞い広がる女の長く美しい髪を視界の端に踊らせながら、男は続けた。
「お前の強さは認める。だが、隊長は一人で良いだろう。」
「文句なら長に言って。長が決めたことよ。」
女は面倒そうにそう言って、最後に飛び掛ってきた一頭に剣を突き刺し、地面へと縫い付けた。
「…多く居て悪いことはないじゃない。
あなたのプライドのために、メルネスを危険に晒したらどうするの。
メルネスに代わりはいないのよ。私達と違って。」
男は否定しようとしたが、肝心の否定の言葉が見つからずに押し黙った。
女は男の方を見やり、きらりと爪を光らせた。
「アイスニードル。」
男の背後にいたこの群れのリーダー格であろう魔物に、幾数もの氷の楔が打ち込まれる。
そして魔物は、スカルプチャと呼ばれる結晶体を残してこの世から消え去った。
男は特別驚きもせず、振り返って宙に浮いているそれを掴み取り、女の方へと投げた。
「それにもし貴方が死んだら、ちょっと困るもの。」
「ちょっと、か。」
「少しだって、不快な思いはしたくないでしょ。」
「我侭な女だな。」
「それはどうも。」
夜風のように微笑って、女は踵を返した。
余程のことがない限り、彼女は言わないつもりだ。
男が死んでしまったら、自分の存在価値は無くなるのだ、などと。
鼻で笑って、男は歩き出した。
この女が傷つくくらいなら、メルネスなど如何でもいいのだと、
己の人生の殆どを否定するようなその本音を、人前で紡げる筈はない。
『ワルター、私、貴方の盾でありたいの。貴方が傷つかぬ様、全てを防ぐ盾に。』
『俺は、、お前の矛でありたい。お前を害する全てのものは、俺が貫く。』
これが矛盾というものか、と、二人に会った後のメルネスは柔らかく微笑んだ。
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やっちまいましたTOLワルター夢。
これはおそらく長編まで拡げずこんな形で幾つか書いていきたいです。