細かいレースの網目を縫って、柔らかな光が差し込んでくる。
風に揺れるカーテンが引いて、覆い隠していた花嫁を曝け出した。
刹那。鮮やかに彩られた唇が、少年の名を呼ぶ。


「…そろそろ時間だ。」


一呼吸おいて、彼はぽつりと、そしてしっかりと言った。

以前正装したときの彼は、慣れない格好にどこかぎこちなく、
着ている、というよりも着られているという表現のほうがあっていたのだけれども。


花嫁はじっと視線をよこしてくる少年の深紅の瞳を見つめ返し、そっと手招いた。
今はもう、立派な一人の…小さな紳士を。


「不安、なのか。」


白の手袋が覆った手を彼はとって、突然に問われる。
その視線は外されないまま。
外すことを許されないまま。

不安でない…といえば、嘘になるだろう。
しかしそれは花婿に原因があるのではなく、あくまでも自分に対するもので。
妻となること、未来に対する、どうしようもないくらいの感情。


…少し。そう答えると、刹那は握った手にぎゅうと力を込めた。


「大丈夫だ、お前たちなら。」



どんな長い演説よりも、すとんと心に落ちた短い言葉に、
不安が、負の感情がぱちんと弾けて、日の光に溶け去った。




刹那は踵を返し、部屋の扉を開く。

私が向かう前に、彼は教会の席へ戻らなければならない。
そう、わたしたちの誓いを、見届けるために。


「幸せに、なれ。」



閉じかけた扉の隙間、微笑んだように見えた彼の、
どこまでもまっすぐな瞳の光と、祝福を受けて。






drei, bald Hochzeit.
(その3、結婚式直前)




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