小さな男の子がガーデンを走っていく。
輝くような金髪で、翠色の瞳をした男の子が。
小さな女の子が服の裾を引っ張る。
くすんだ金髪に、深海色の瞳をした女の子が。

輝くような金色の髪で、深海色の瞳をした私が男の子を抱き上げる。
くすんだ金髪に、翠色の瞳をした彼が女の子を抱き上げる。

「そろそろアフタヌーンティの時間だな」
時計を取り出して彼がそう告げると、子どもたちは大きな瞳をきらきらと輝かせた。
午後の日差しが木の葉の間を抜けて、やわらかく降り注ぐ。
今日は珍しく空が青くて、すっきりした陽気に包まれていて。
青々とした庭に据え付けられた白いテーブルセットがいつもより眩い。
彼の手元から香るのはキャラメルとミルク。
三段重ねのティースタンドには、下からサンドイッチ、スコーン。
いちばん上の段にケーキを乗せれば、お茶の支度はおしまい。

「これ、とうさまのスコーン!」
「おとうさまのスコーン、くろい!」
「うるせぇ!」

小さな手が黒こげのスコーンを取って、嬉しそうに口に頬張る。
こどもたちの余計なひと言に言葉を返しはしたけれど、
彼の表情は穏やかに、口の周りをクロテッドクリームでべたべたにする子供たちを見つめる。

「こら、はしたないぞ、お前らイギリスを代表する紳士と淑女なんだからな!」
「「ふあーい」」

懐から取り出したハンカチでそのクリームをぬぐってやってから、彼は私のほうを向いて、
…呆れ顔になった。

「まあ…お前に似たんだ」

慌てて口元を拭って、ジャムが少しハンカチを汚す。
彼はじっと見てきたかと思うと微妙な表情をし、クリームまみれの自分のハンカチを一瞥した。

「まだついてるぞ、」

くいと引きよせ、彼の舌が頬を掠める。
瞬きをひとつ挟んで、今度は微かに唇同士が触れた。
交錯する翠と蒼、二人の頬はほんのりと薔薇の色。
テーブルの下でこっそり手を繋いで、なんだかひどく、幸せな、






「…ゆめ」

目を開けば、昨晩と同じ恰好の彼がいた。
まだ暗い。時計の針は四時を指している。
のどの渇きを覚えてベッドを下りれば、生暖かい液体がとろりと腿を伝った。
彼の中身のない白い液体は、決して先刻の夢を現実にはしない。
全ての母と呼ばれながら、私だって永遠に母にはなれやしない。
私は海、彼は国。
私たちを巡り合わせ、けれどけっして繋げることのないただの事実。

子を成し繁栄する人間たちを見て、羨ましいと思ったこともあった。
なぜなら、きっと彼は、私より先に。

いつのひか、けれど必ず、訪れる未来の果てに、私は少しだけ泣いた。


(そんなある朝の ゆめのはなし )

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