「ツバサとホリックありがとーっ!また続き出たら貸してね?」 「おい、自分で買えよ楓。」 「いいじゃんいいじゃん、あたしだって他の漫画貸してるしー」 「値段が違うでしょ値段が。ま、どうせ買うんだしいいけど…」 「やった!ほんと高いんだよねぇ豪華版もホリックも。」 「んじゃまた明日ね。」 「おぅ!バイバーイ。」 親友と過ごすいつもの時間。 少し違うのは、普段マジメを被ってる私がマンガを堂々と学校に持ち込んでいること。 いつも借りるだけの私が人にマンガを貸していること。 通学用バッグとは別の袋に、返して貰った大切な「ツバサ」と「×××ホリック」を入れ、 私はいつものように、帰宅していた。 改札を抜け、明るい道を選んで歩く。 今日はなんとなく電車で通学して、なんとなくバスに乗らずに歩いた。 お金を節約したいのなら自転車で行けばよかったのに、何故かそうした。 駅前でメロンパンを買って、それを食べ食べ歩いていく。 ちょっと恥ずかしい気もするけど、食欲には勝てない私。 「すみません、ちょっと、お聞きしたいんですが。」 そう声をかけられたのは、人通りのあまりない場所。 私が反射的に振り向くと、ずっと年上の、とても朗らかで優しそうな男の人が立っていた。 彼はにこっと微笑み、それから口を開いた。 「人を探しているんです。いや…家かな。さん、というお宅を知りませんか?」 「このあたりなら…うちしかはいませんけど。」 「そうか、じゃあ君の家かも知れないね。」 「×××の◇△…。」 「そう、その住所のはずだ。…それでね、そこの…さんに用があって。」 なんだ、この人。 すっと一瞬、背筋が寒くなった。 このひとは優しそうだけど……優しそうでしかない。 直感でそう思った私は、咄嗟に嘘を吐いた。 「…は妹です。用件ならお伝えしますが。」 「本当かい?じゃあ、これを…」 男の人は、カバンから、カバーをかけた本を一冊取り出した。 「そのさんに、渡して貰えるかな?」 新手の…勧誘か何かだと思った私は、怪訝そうにその本を見やる。 男はずっと同じように微笑んでいた。 「きっと喜んでもらえると思うんだ。さんに。」 怖い。 一刻も早くその男から離れたくなって、私は作り笑いをしてその本を受け取った。 「じゃ…渡しておきますね。」 「有難う。じゃあ気をつけてね。」 「……」 私は家のほうを向くと、早足で歩き出した。 男が後ろで何か呟いた。 「がんばって」 いったい、何を…!? 私は振り向けも、返事すら出来ず、ただただ家へと歩いていった。 「おかえり、。」 「ただいまー。ねぇ、今そこ……っ……??」 帰ってすぐ、お母さんに話そうとしたけれど、上手く言葉が出てこない。 まるで、前見た映画のヒロインのように……口がぴっちり閉まっているようだった。 「…変な子ねぇ?ほら、着替えてきちゃいなさい。」 お母さんが台所に戻って行くと、口が緩んで、開くようになった。 「……どうして…」 とにもかくにも、私は部屋に戻った。 鞄を置き、携帯を胸ポケットに差したままベッドに座る。 手にはずっと…あの本。 「…一体…何の本なんだろ…」 誘われるように、表紙を捲る。 結構厚い本だった。 内容を知りたい好奇心が、恐怖心に打ち勝ってもいないのに、私の手は表紙を捲った。 世界を変えるチカラ、次元を超えるチカラ 世界を変えさせる力、次元を超えさせる力 相反する陰と陽 同様の強大な力 どんなに強く光が照らそうとも どんなに色濃く闇があろうとも 一方のみでは何も生まれない。 ツバサを求めよ。 見開きで、真っ白なページにそれだけ書いてあった。 私の手は、次を捲る。 数瞬のラグ。 私は、日本家屋の中で目を覚ました。 NEXT BACK |